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イウナレバー
二次創作とかのテキスト。(一部の)女性向け風味かも。
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 いつもは重力に従って下がりっぱなしになっている唇の端っこ(なんでも口角とかいう名前がついているそうなんだけども、いったいどの辺に角っぽい要素があるっていうんだろうか。どこもこれといってとがってないような気がするんだけど、俺頭悪いから、よくわかんないや)をきゅうって上げて笑ってくれた友達の顔を見て、俺は(笑ってくれてるってことは、イコールでつまんなくないってことだと思ってもいいのかな。俺のこと、笑ってくれるくらいには好きでいてくれてるんだろうか)とか考えてうれしくなる一方で、(あの唇の笑った感じがなんだか痛そうなんだけど、あれはなにに似ているんだったっけか)なんていうことも考えていて、その一秒くらい後に気がついたのは、それが傷口に似ているんだ、ということだった。
 大好きな友達の唇を傷口扱いするなんて随分失礼な話もあったもんだと俺の俺への好感度は大幅ダウン。いや、でもね、だけどね、俺の言い分も聞いてください。何しろ俺の友達ときたら滅多に笑おうとしないもんだから、少しだけ綻んだ唇の合わせ目のところ、あのちょっと内蔵色に近くなるあそこがね、どうにも際立って見えちゃうんだ。顔に出来た亀裂、その隙間からちょっとだけ見える、皮膚の下で溢れている肉の色。更にその薄皮をぴっと裂いたら、内側でだくだくと流れている体液の色もそこに混じるんだ。うわあ、やだ怖い、痛い痛い痛い。俺痛いの嫌いなの。
 脳味噌の、つむじちょい手前くらいの位置がしくしく痛い。(たぶん共感とかシンパシーとか、そういうあれを脳味噌のこの辺で処理しているんじゃないかな。)頭皮を動かす感じでぐにぐにと抑えて痛みをやり過ごそうと四苦八苦していると、大丈夫かと気遣われてしまった。気遣ってくれるってことは、イコールでめんどくさくないってことなのかな、とか考えて嬉しくなる一方で、傷口が開いたみたいだなあ、なんて考えたら痛くなったので、俺はこめかみを支えることにした。大丈夫、なんにも問題はないんです。
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知人の創作BL二次。
不健全だけど全年齢。
元ネタなしで読むこと前提ですが、BLですので畳んでおきます。
 理不尽な暴力、っていうのはどうかな。君は謂れもない差別を受けている。君は古来より迫害されてきた一族の生まれで、同時に姿かたちに極めて珍しい特徴を持っているので、同属たちの中でも村八分に遭って――うん? ああ、それは全身整形を――そうか、そうだね。見た目を変えてしまっては本末転倒だったね。すまないね、結局は死人に残るのなんて見た目くらいなものだからさ、外見的な美しさも必要だろう? ああいや、違うんだ、君がそう言うならそれ以外の方策を考えるよ。そうだな、こんなのはどうだい? 美しく生まれた君は、心も美しく健やかに成長していたが、ある時奇病にかかって骨格から何からすっかり変わってしまった! 醜く変わり果てた姿を見て、一族の人たちは君を悪魔に憑かれたのだと迫害する! うん、いいんじゃないか。あああ、違う違う、もちろん、醜いっていうのは元の姿と比較してだよ。元々が美しすぎんたんだ。そういうことだから、そう怒らないで。
 あるいはそう、回避しようのない状況、とかね。君がそれを回避すると、君が大切にしている誰かがひどい目に遭ってしまうんだ。だから君はそれを回避できない。それ、っていったら、やっぱり弾圧とかじゃない? ほら、迫害受けてる一族でしょ、それで君が同族が逃げ切るまでの囮役にされてさ、君の実力をもってすればいくらでも逃げることはできるんだけど、それだと君の大切な人は助からない。ベタだけどなかなかいいんじゃない? オプションとしては、君の大切な人は君の事をどう思っているのかって辺りがあるね。君の事を嫌っていたら鬱展開、君の事を慕っていたら悲劇的。どっちが好み? そう、じゃあそれで行こう。

 ん? 一族の歴史ならちゃんとでっち上げておくよ。大体半年くらいかかるから、それまでにちゃんとイメージを固めておこう。任せておいてくれ、僕は自分の信じるものにはどこまでも付き従う人間だよ。うん、僕はね、お金のことを愛しているから。

 これだけ感動的な死だ。きっと誰かが同情して、泣いてくれるよ。
「~~~、から私は気持ち悪いと思ってたよ、君の事」「はは、そう」「そう。私も大概だったけど」「そう」「そう」。
 要するに僕がここにいるのは彼女が自分を全肯定してくれる何かを求めているためであり僕は彼女に憎まれるのが恐ろしいからずっとここにいるのであり、僕たちはお互いに見下しあいながら、どこか高いところを見上げているのだった。あいつには絶対辿りつけないだろうなあと嘲りながら、僕たちはそれを知られたくないがために、楽しそうににたにたと微笑んでいる。
「きれいだね」
 彼女が笑ったので、僕も口端を適当に上げて見せる。「うん。これは×××の、△△という作品なんだよ」「そうなんだ」「そうなんだ」そして部屋は静かになる。
 二人きりの部屋でどちらも喋る言葉を失ってただ黙っているばかりならば、そしてその原因をお互いに押し付けるのならば、さっさと部屋を出てしまえば良いのに、と思う。それをしないのは、彼女が誰か自分よりも圧倒的に格が下で、学のない、批判されるべき人間を求めているからで、僕が誰か自分よりも圧倒的に人間が下で、学のない、非難されるべき人間を求めているからだ。
 部屋の中で、キーボードの音だけが響いている。かちゃかちゃしてとてもうるさいから、僕は指を動かすのをやめる。気持ち悪い。
 雨が降って羊皮紙が湿気る。書きづらい。
 明後日会う。なにが出来るものか。

 焼け跡へ行った。きっと元の住処や近辺がどうなったのかを気にするだろうと考えたため。
 その足で中央の図書館へ向かう予定を組んだのは失敗だった。昨日の雨の名残りである水溜りに、紙を数枚落としてしまった。水を吸ってふにゃふにゃになってしまったが、乾いたら使えるのだろうか? 昨日の湿気なんてこれと比べたらかわいいものだった。全く疲れる。

 オリバーに会った。彼は悪魔に憑かれている。彼も、彼の周りの人も可哀想に。
 彼はユルゲンをひどく恨んでいる。何もないといいのだが。
 小ライトスの『流転』。panta rhei 水は大地に染み込み川へ流れて海になる
 全体に前作より文脈が分かりづらい。いささか訳者の力量が足りないように思う。

 ユルゲンから手紙。いくつかの近況報告。オリバーの処分についての話題が含まれていないところを見ると、どうやらユルゲンは参考人にもされていないようだ。あれだけ彼の名前が挙げられていたのに。オリバーの奴、頭を患っていると判断されたか。
 返信しようと思ったが、書き付ける紙が見当たらない。元オリバーの住処で水浸しになった羊皮紙が数枚あるが、当たり前のようにふやけている。押し花を作る要領で圧せば直るだろうか。
 J.パスカヴィ『聖画静物規定』。古典的な配置から最近取り入れられたものまで手広く解説されている。新教派批判が随所に見られる。感情的な印象の批判。

 予定通りオリバーは死んだらしい。結果的に火が回ってしまっただけとはいえ、彼が殺してしまった命の重みは、きっと彼を苦しめるだろう。あれは天の国へは入れまい。いい奴だったんだが。
 ただでさえ色恋は罪を伴いかねない危険なものだ。それを、よりにもよってあんなものに熱を上げるからこんなことに。
 羊皮紙はかぴかぴのままで直らない。そろそろ返信しないわけには行かない。明日買いに行く。

 ユルゲンに返信。オリバーのことを伝えるのはやめにした。
 水浸しになった羊皮紙に妙な文字が書き付けられている。誰の仕業だ?

『また来たの? どうしてそこにいるの? どうして私を見るの? あなたは誰? 返事くらいしてよ、ねえ、お願いだから、ねえ!』
 これは?

『久しぶり! 全然来ないからどうしたのかと思ったよ。忙しかったのかな。私は相変わらず暇してるんだけど。えへへ、来てくれて嬉しいよ。私からはなんにもできないけど。きみに私はどう見えているんだろうね。せめてこの言葉が、伝わっていると、いいんだけど』
 時系列がおかしい。

 オリバーに憑いていた悪魔!
 あいつ、燃やしたんじゃなかったのか?

 水浸しになった時、見つかった?

『さっき銀色の文字が天井を塗りたくっていたよ。あれはなんだろう。讃美歌じゃないかって私は思うんだけど、きみはどの色の讃美歌が好き? 私は金色のがいいなあ。特にぼんやり光るようなのが好き』
 色とはなんのことかと書いたが返事はなかった。一方通行。

 羊皮紙を焼却。薄気味が悪い。

 ユルゲンが来訪。オリバーの家を尋ねた時の話と、悪魔についての話を聞く。
 オリバーのことは他所で聞いたそうだが、どうしてそんなに恨まれているのか分からないとのこと。
 彼が読んだ言葉は五つだけだそうだ。
 →「私以外の」「見てるの?」「あなたは誰」「誰かそこにいるの」「返事くらいしてよ」
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