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イウナレバー
二次創作とかのテキスト。(一部の)女性向け風味かも。
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中古レコード屋さんで滝本さんの『空の下』を買ってはしゃいだり、明日美子さんの『卒業生』目当てで友人と本屋へ行ったら彼女もそれがお目当てだったので二人で並んで同じ本をカウンターに持って行くという微妙な光景を繰り広げてみたり、新宿ロフトで戸田さんのヘルメットが欲しいなあと思う一方で小林写楽が実在する人間であるということをようやく確認できたのでなんだか安心したり、それに同行してくれた知人にソフビ人形のアイホールくりぬいてもらったり、喜多方ラーメンとか家系ラーメンとか餃子の王将とか食べに行ったりしてました。
数日間の私のあらすじは、400字詰め原稿用紙一枚にも満たない。


追記に拍手返信がたたんであります。
ぱちぱちしてくださる方ありがとうございます。確認してにやにやしています。にやにや。
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 雨が降って羊皮紙が湿気る。書きづらい。
 明後日会う。なにが出来るものか。

 焼け跡へ行った。きっと元の住処や近辺がどうなったのかを気にするだろうと考えたため。
 その足で中央の図書館へ向かう予定を組んだのは失敗だった。昨日の雨の名残りである水溜りに、紙を数枚落としてしまった。水を吸ってふにゃふにゃになってしまったが、乾いたら使えるのだろうか? 昨日の湿気なんてこれと比べたらかわいいものだった。全く疲れる。

 オリバーに会った。彼は悪魔に憑かれている。彼も、彼の周りの人も可哀想に。
 彼はユルゲンをひどく恨んでいる。何もないといいのだが。
 小ライトスの『流転』。panta rhei 水は大地に染み込み川へ流れて海になる
 全体に前作より文脈が分かりづらい。いささか訳者の力量が足りないように思う。

 ユルゲンから手紙。いくつかの近況報告。オリバーの処分についての話題が含まれていないところを見ると、どうやらユルゲンは参考人にもされていないようだ。あれだけ彼の名前が挙げられていたのに。オリバーの奴、頭を患っていると判断されたか。
 返信しようと思ったが、書き付ける紙が見当たらない。元オリバーの住処で水浸しになった羊皮紙が数枚あるが、当たり前のようにふやけている。押し花を作る要領で圧せば直るだろうか。
 J.パスカヴィ『聖画静物規定』。古典的な配置から最近取り入れられたものまで手広く解説されている。新教派批判が随所に見られる。感情的な印象の批判。

 予定通りオリバーは死んだらしい。結果的に火が回ってしまっただけとはいえ、彼が殺してしまった命の重みは、きっと彼を苦しめるだろう。あれは天の国へは入れまい。いい奴だったんだが。
 ただでさえ色恋は罪を伴いかねない危険なものだ。それを、よりにもよってあんなものに熱を上げるからこんなことに。
 羊皮紙はかぴかぴのままで直らない。そろそろ返信しないわけには行かない。明日買いに行く。

 ユルゲンに返信。オリバーのことを伝えるのはやめにした。
 水浸しになった羊皮紙に妙な文字が書き付けられている。誰の仕業だ?

『また来たの? どうしてそこにいるの? どうして私を見るの? あなたは誰? 返事くらいしてよ、ねえ、お願いだから、ねえ!』
 これは?

『久しぶり! 全然来ないからどうしたのかと思ったよ。忙しかったのかな。私は相変わらず暇してるんだけど。えへへ、来てくれて嬉しいよ。私からはなんにもできないけど。きみに私はどう見えているんだろうね。せめてこの言葉が、伝わっていると、いいんだけど』
 時系列がおかしい。

 オリバーに憑いていた悪魔!
 あいつ、燃やしたんじゃなかったのか?

 水浸しになった時、見つかった?

『さっき銀色の文字が天井を塗りたくっていたよ。あれはなんだろう。讃美歌じゃないかって私は思うんだけど、きみはどの色の讃美歌が好き? 私は金色のがいいなあ。特にぼんやり光るようなのが好き』
 色とはなんのことかと書いたが返事はなかった。一方通行。

 羊皮紙を焼却。薄気味が悪い。

 ユルゲンが来訪。オリバーの家を尋ねた時の話と、悪魔についての話を聞く。
 オリバーのことは他所で聞いたそうだが、どうしてそんなに恨まれているのか分からないとのこと。
 彼が読んだ言葉は五つだけだそうだ。
 →「私以外の」「見てるの?」「あなたは誰」「誰かそこにいるの」「返事くらいしてよ」
 あ、いらっしゃい。待ってたよ。ええっと、さっきはなんの話をしてたのかな。ああ、そうだった、私の話をしてたんだった。
 私ね、そっちが見えないの。今まで私を見ていたのが、あなただったのかも分からない。みんな同じ人だったのか、全部違う人だったのか……私に見えるのはインクみたいな色ばっかり。たまに鮮やかな文字が通ったり、あなたが私を見てる時は、天井も明るくなるんだけど。ふふ、見えないのに見られてるって分かるの、面白いよね。ああおかしい!


 あれ? なんだか、いつもより長いね。いつもならもう暗くなっちゃうのに……なんでだろう? 嬉しいから、いいんだけど。
 そう、私、嬉しいよ。天井が明るいのは、とても嬉しい。
 あなたには私がどう見えてるんだろう。私はどんな姿をしてる? 女の子? 男の子? きれいな形をしてるといいな。私のこの言葉とか、気持ちとか、ちゃんと伝わってると良いんだけど。伝わってるって信じてるから、私、一人でも寂しくないんだよ。


 いつか、あなたが見られるようになるといいなあ。そしたら、きっと、触らせてね。あなたの話、聞かせてね。
 ああ、ベルニケか。久しぶりだ。一週間? そうか、それだけの間に――いや、なんだか随分と遠いところまで来てしまったように思える――一週間。七日間。はは、無様だね。
 それでなんだっけ、悔い改め? もちろんだよ、僕は神を敬愛している。祝福されたものを屠ってしまったことは、本当に後悔している。彼らが幸福の国へ入れていればいいと――僕もそこまで厚顔じゃない。天の門が閉ざされたことは分かっているし、そうあるべきだとも思うよ。だが、だけどね、ベルニケ――ああ、ああああああ、あの、あの男! あいつが、僕の、僕の僕の僕の!
 ――ごめん、取り乱した。ああそうなんだ、今も気が狂いそうなのを必死に我慢していてねえまあここにいる人達はみんな僕のことを気違い扱いするんだけど恋って得てしてそういうものだと僕は思うよ。恋を悪魔と呼ぶのなら僕は喜んで黒ミサでも執り行うし心臓を捧げたっていい――ははは例え話さ例え話! そんな顔をするなよ、ははは、ああおかしい!
 うん?
 ――やめろ!

 ――ごめん。まだ、だめだ、僕はあいつが許せない――ああ、あいつにそんなつもりがなかったのは分かってるんだ、分かっているけど、どうしても耐えられない――その名前は出さないでくれ――あああ、だからその名前だよ! やめろって言って、ああもう!

 友達? ああ、確かに友達だったよ。とてもいい友達だった。過去形さ、当たり前だろう! あいつ、あの×××××、ああ、愛する人を奪われてまで続く友情なんかない! あいつは僕と彼女が積み上げた時間を奪ったんだ! 全部、全部あいつだった――僕じゃなかった――ああ、だから、だから全部、燃やして――あああ――
 彼女の――彼女の、「最初」は、僕じゃなくて――分かったんだ。あいつが家に遊びに来て、彼女のことを教えて――それで――気が付いたのは、あいつが帰った後だよ。日記帳を見たんだ――見たことのないページが、開いていて――それで――そこに――あ、あああ。ああ、う、うう――初めて会った時――僕は、彼女を本当に――でも、違ったんだ、違った、本当はあいつだった、僕じゃなかった――ああ、あああ――気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い、気持ち悪、い、いぁ、は、あはは、ははははは、ああ。あああ、ああ、あ、あ あ  ああああああああ!

 あいつの性格を思えば、当たり前のことだ、あいつはなんの問題も感じずに彼女に手を出すさ! 僕がどんな風にして彼女を慈しんでいたかあいつは知らないって、そんなこと、分かりきってたのに!  いいい、あ、ああ、彼女、彼女にあいつを拒否することなんかできないんだ――分かってた――なのに僕は。僕は!

 許せないんだ。どうしても許せないんだ。
 僕が彼女を千々に引き裂いた時も、彼女は悲鳴一つあげなかったよ。当然だ――当然のことだ! 僕の、僕だけの君――あいつが――愛しているんだ、愛しているからこそ、許せない――ああ。ああ、ああ! 愛してるのにどうして、分かってる、分かってるけど許せない! 全部を台無しにしたあいつも! 拒むことのできない彼女も! 拒めないと知っていながら、彼女を守れなかった、僕もだ!
 やっぱり、彼女を誰にも見せるべきじゃなかったな。あの部屋、僕の部屋の中だけで、ずっと閉じ込めておくべきだった。

 ああ、燃やしたかったのも殺したかったのも、彼女だけだよ。あいつ? ――はは、分かってない、分かってないなあベルニケ! あんな奴、僕は絶対殺したりしないよ。ただ怨嗟するだけさ――殺したりしたら、行き先は違うと言っても、どちらかが道を間違えて天の門を前に行き合ってしまうかもしれないだろう? だから僕は手を出さないよ。後でゆっくり死ねばいい。僕が行くのと同じところへ、あいつも行くに、決まってるんだから!
 球形の中にアトランダムで三点に空いた穴からぞるぞるとなめくじが溢れ出て止まらないので、私はそれを顔と名づけた。三つの穴は右目と左目と大きな口だ。なめくじの涙(暫定)は垂れてすべらかだった頬(仮称)を伝い汚して口元(仮定)をなぞり地面に沈む。ぼた。私はそれを真っ白な雑巾で吸い取り、ついでに顔も拭き上げて、口元から溢れるなめくじに押し当てた。こぼれ出る予定でいたなめくじがぐずぐずとその流動を逆転させて戻っていくのが雑巾の向こうに感じ取れたので、私はちょっとうれしくなって、押し当てる力を強くする。
 ごぼ、と自分の気道で水音がした。なめくじみたいな気泡の音色。私は塩色の涙で泣く。
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