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イウナレバー
二次創作とかのテキスト。(一部の)女性向け風味かも。
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 私とあの子が初めて会ったのは春のこと、満開の桜がとてもきれいな薄紅色をしていて、舞っていく風がとても柔らかだった。あの春風をいつになく優しく感じたのは、私があの子に恋をしたからだって、分かったのはあの子が私に愛を囁いてくれるようになってからだったわ。頬を桜とおんなじ色に染めて照れくさそうに微笑みながら私の耳に吹き込んだ言葉の甘さは、言葉じゃ表せないくらいにとろとろしてて、これを幸せって呼ぶんだろうなあってね、思ったの。私、この人のこと、好きなんだなって思った。愛とはこういうものかしら、とも気づいたわ。あの頃は私もまだ幼かったのね。あの子だってまだ小さくて、すっごくね、かわいかったんだよ? 今だってとってもかわいいけど、ああでも、だいぶかっこよくもなったな。どっちにしても大好きな人であることに、変わりなんかないんだけどね。
 あの夏に私たちが出会うことになったのは、だからもう運命だったのね。そのものと呼んでも過言じゃないでしょうね、だってあの瞬間の陽差しのきらめきといったら、私、一生忘れられないわ。すごく明るいもので私の心が全部おひさまの下に晒されたみたいな、あれはでも太陽じゃなくて、あの子の眼差しだったのかもしれない。あんなにきれいなもの、そうはないもの――この世の中で最上のものはほとんどあの子が持ってるのよ、残りは私が全部かき集めて、あの子にあげるの。そうしたらきっと喜んでくれるでしょう? うふふ、楽しみだなあ。初めて私たちが出会ったあの秋にも、あの子はとっても喜んでくれてたわ。私を抱きしめて口付けてくれた、肌寒さなんて忘れてしまうようなあの温もりに、本当に喜んだのはあの子じゃなくてむしろ私だったんだけど、あの子はにこにこ笑ってくれて、その笑顔がオレンジ色に彩られるのがとってもきれいで、あの時ばっかりはカメラの一つでも買っておけばよかったって後悔したわね。写真に残してずっと一緒にいたかったくらい、なんて言って、カメラ越しにあの子を見るだなんてもったいないこと、きっと私にはできないんだけど。結局は記憶に残すのが一番なのよ。だって私、あの子の記憶なら絶対に失くさないわ、風化も劣化も美化もさせない、ありのままを覚えていられる。ずっと想い続けることが出来れば、覚え違えることもないんだから。
 それでね、あの冬に、私たちの歴史は始まったんだよ。初めて目が会った時にね、寒さなんか吹き飛んじゃったの、覚えてるわ。恋をするって幸せなこと、愛し合うって、楽しいことね。世界中が薔薇色に見えるの。たまに黄色も混じるけど、殆どは情熱と純潔で敷き詰められててね、汚いものなんかみんななくなってしまうの、好きってことしか、残らなくなるの。一面の雪に覆い尽くされちゃったみたいでね。たまにあの子を私から奪おうとする人もいるけれど――仕方ないよね、だってあの子はあんなに素敵なんだもの、気持ちは分かるのよ――そういうものは、みんな雪の下に押し込めちゃうから大丈夫。私たちには愛しか残らない、余計なものなんて残らないし、残さないわ。あの子には、いらないものだものね。

 名前?
 そんなものはどうでもいいの、だってここにある愛が全てで私はあの子を愛していてあの子も私を愛していて一目見れば互いに互いが運命の相手で愛すべき人なんだって分かるんだからその時私たちに名前なんて意味がなくて知る必要なんてものはなにひとつないのよ。あの子が×××って呼んで欲しいと願うのならばそれはその通りにするけれど、それさえも私とあの子の愛を彩る風物詩、十二の風じゃ足りないわ、私たちが見つめあう間に二人の距離を掠めていく風の一つ一つに季節があって、季節だけが世界の全て。
 さあ、早く再会を始めなくちゃ。
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