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イウナレバー
二次創作とかのテキスト。(一部の)女性向け風味かも。
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 こんな夢を見た。知人と服を買いに下北沢まで行くのだ。今夏はひどく暑いのでTシャツと七分丈の何がしかを着てばかりいるという話しをしたところ、夏のおしゃれ着を買いに行こう、という話になった。「おしゃれは組み合わせが命だからね。夏の洋服を一式持っておいで、合いそうなのを見繕ってやろう」
 それはそうだと頷いて、幾許かの服を巨きな紙袋に詰め込んだ。あまりの巨きさに青息吐息で下北沢まで辿りつき、おしゃれな衣服を見につけた知人と共に徘徊する。とある店で「君に似合いのはないね」と、自身の服を探し始めた知人の背を見て、ふと思った――私の求める服は、八王子にあるのではないか?
 ふらふらと駅へ入り、ちょうど来ていた電車に乗る。八王子へは急行なら一駅で着く距離だったから、さほどの勇気がいる行動ではなかった。携帯電話を開くと、知人からどこにいるのか尋ねるメールが来ている。「ごめん、うっかり八王子行きの電車に乗っちゃった」「そっか。じゃあ今から行くね。八王子」
 八王子に着くと、見知った顔を見た。高校時代の友人であるとと子だ。「あれ、××ちゃん。なにしてんの」「おしゃれ着買いに来た」「その紙袋は」「私の服」「ふうん」大した興味もなさそうな態度とは裏腹に、とと子は「中身見てもいい?」と尋ねてくる。応を出すや否や、彼女は服を検分し始めた。
 「あれ?」半分程を披いたところで、とと子が素っ頓狂な声を上げた。紙袋の中身を覗くと私の声帯も「おお」と震える。色鮮やかなミシシッピーアカミミガメが、冬眠でもしているかのように埋もれていた。私の知る冬眠と違うのは、首が甲羅に収まることなく、でれんと力なく伸びきっていることだった。
 「こないだ八王子で遊んだ時に紛れ込んだのじゃない」と言うとと子に頷く。八王子にはミドリガメが多い。視界の端の花壇からも、夏の陽気で冬眠から覚めたミドリガメがうごうごと顔を出していた。電車の発着音が聞こえる。知人が電車から顔を出したのと同時に、紙袋の中の亀がはたと首を持ち上げた。
 「あれ」今度は私が素っ頓狂な声を上げた。首の付け根から、黒い何かが覗いている。蟻の後ろ足に似ている……と思うが早いか、亀は足を動かして這い始めた。足の付け根からも蟻の足が見える。一本二本ではない、三本、四本、いや、付け根だけじゃない。皮膚を突き破って、幾つかの足が蠢いている。
 その瞬間、亀はすくと立ち上がった。身の丈の半分ほどもある首を駄々っ子のように振り回し、腕を歩行とは無関係にばたつかせて、猛然と紙袋を折り曲げ、外の世界へ飛び出していく。身体中に蠢く蟻の足と同じ速度でばたばたと、あらゆる部位をてんでばらばらな調子で動かしながら、亀は醜く進んでいた。
 「蟻というより、蜘蛛に似ている」奇怪な歩き方に理解の出来ない恐怖を覚えながら、やっとのことでそう吐き出すと、とと子は「ゴキブリみたいだ」と小さく呟いた。一部始終を知人に聞かした所、「そういう生き物だったんだろ。早く買い物に行こう」と急かされたので、それもそうだと紙袋を取り上げた。
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